作品について
「引き継ぐビースト」は、野良ビーストを救うために戦った一体のビーストと、その姿に憧れた若いビーストを描く短編作品です。
野良ビーストを救った者の怒りと、その背中から受け継がれていく灯火を描く短編。
「引き継ぐビースト」は、野良ビーストを救うために戦った一体のビーストと、その姿に憧れた若いビーストを描く短編作品です。

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引き継ぐビースト もう駄目だと思った。瞬間、赤黒い稲妻が走った。 野良ビーストを駆除すべく銃を構えたレプリカント。 私の倍はある巨体。 私は悪いことなどしていない。それでも、この社会でビーストを壊すことに罪は無い。 怯える姿を楽しむ相手を前に、できることは何もなかった。 その時、鉄の塊が降ってきた。 雷鳴のような銃声。火花、飛び散る油。 音が止んだ時、巨躯は倒れ、私と同じ背丈のビーストだけが立っていた。 身の丈に合わない巨大な鉄塊を担ぎ、険しい表情を私に向けた。 「これは俺の怨嗟でやったことだ。とっとと失せろ」 「レプリ殺しの罪を一人で背負うつもりだ。どうして。」 理解したくて、彼女を追った。 蹂躙されるビーストはそこら中にいる。 彼女はそのたびに怒りを振るった。 死にかけた同胞を拾い、明日消える命を一日だけ延ばした。 資材調達だと言って施設を襲った。 そのたび、まだ悲惨な子を連れ帰っていた。 そんな行動に助けられた者の幾らかは彼女に続き、気付けば仲間が増えていた。
引き継ぐビースト 後になって知った。 彼女には主がいた。野良ビーストを救おうとしていた善意の人。 だがレプリに騙され、保護施設のつもりが、使い潰す場所に加担してしまった。 後悔と失意のうちに主は亡くなったそうだ。 やがて彼女は指名手配された。 幾人ものレプリを殺し、幾つも施設を襲い、社会秩序を乱した犯罪者。 そして今、討伐部隊に包囲されている。 逃げ道はない。 彼らはこれまで戦った軍勢とは違う。 社会を守るため、犯罪者に立ち向かう者。 道理が無いのは私たちの方だった。 復讐を望む者がいる。 社会を憎む者がいる。 彼女に刃を向ける。 震えながら私の服を掴む、まだ若いビーストたちがいる。 あの日、稲妻に救われ、輝きに憧れた私は……
引き継ぐビースト 彼女が振り返る。いつもどおり巨大な鉄塊を担いでいた。 昔は英雄の剣に見えた。今は違う。 何度も継ぎ足し補修され、遺恨と憎悪を積み重ね、本来の形など残っていない。 彼女の身の丈に合わない大きさ。 私の方を向いた彼女は少しだけ笑った。 「お前はこっちじゃないだろ」 私は彼女の隣へ行かなかった。 私もまた、背を向け歩き出した。 彼女たちは歩き出した。 あの日、彼女たちは散った。 だが、その奮闘は討伐隊の包囲に穴を穿ち、若いビーストたちは逃れた。 彼女の憎しみが果たされたかは分からない。 それでも、あの輝きは忘れない。 今度は、私がその灯火を守る。

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