作品について
「個性のないビースト」は、量産されるビーストの身体や記憶と、「自分だけの私」という感覚を描いた短編作品です。
量産されたビーストが、自分だけの「私」とは何なのかを見つめる短編。
「個性のないビースト」は、量産されるビーストの身体や記憶と、「自分だけの私」という感覚を描いた短編作品です。

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個性のないビースト 輸送車が街を通り過ぎる際、幸せそうな飼い主と、並んで歩くビーストを見た。 綺麗に整えられた毛並み。可愛らしい服。揺れる尻尾。 ――私と同じ顔。 ――私と同じ顔。 あの子は飼い主の腕の中。私は煙たい銃火の中。 何が違う? 私たちビーストはパーツの組み合わせで出来ている。 定番の体。流行りの髪。人気の瞳。 同じ部品を選べば、同じ姿が組み上がる。 私たちは出荷時の模造記憶で出来ている。 お決まりの情景。よくある失敗談。それらしい成功体験。 同じ偽物の記憶を積み重ねれば、同じ人格が出来上がる。 特徴的なパーツを集めて奇抜な姿を象った。 既製品の私。 ここに私だけのものは無い。
個性のないビースト だから思った。 もっと役立てば、必死に頑張れば。愛されるかもしれない。 いつか本物の「人」の隣にいれば、私も、「私」になれるかもしれない。 だから走った。走って。走って。 でも結局は壊れて止まってしまった。 視界の端で戦友が泣き崩れていた。 どうして泣くの? 私は紛い物なのに。 代わりのきく量産品が一つ減るだけなのに。 それでも。 その涙は本物だった。 私を抱き起こそうとする腕も。 失いたくなかったと叫ぶ顔も。 全部、本物だった。 ……そうか、なら。 あなたの隣にいた私も……。 あなただけの、私も……。

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